日本環境感染学会誌
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報告
介助歯磨きによる血液汚染の要因
—歯磨き法が手の汚染を防止するか?—
副島 之彦小笠原 正
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キーワード: 歯科, 介助, 歯磨き, 血液汚染
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2012 年 27 巻 6 号 p. 425-430

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抄録

  重症心身障害児者や要介護高齢者では,介助歯磨きが不可欠であるが,介助歯磨きの際の血液汚染のリスクは明らかになっていない.血液汚染のリスクが明確になれば,介助歯磨き時の手袋着用の根拠となる.そこで本研究は,介助歯磨きによる介助者の手への血液汚染状況を調べるとともに,適切な歯磨き法により介助者の手への血液汚染を防止できるか否かを検討した.調査対象者は51組の被介助者と介助者を調査対象とした.比較対照は1名の歯科衛生士であった.歯科治療前に保護者にグローブを装着させたうえで,1分間の介助歯磨きを実施させた.介助歯磨き終了後にグローブを回収し,ルミノール発光試験を実施した.また介助歯磨き前と後の唾液を採取し,唾液中のヘモグロビン濃度を測定した(ラテックス凝集法).
  被介助者は臨床的に健康歯肉を有していたが,介助歯磨きにより唾液中のヘモグロビン濃度は,有意に増加した.介助歯磨き後の唾液中ヘモグロビン濃度に影響する要因として歯磨き方法と歯肉炎の状態が挙げられた.介助歯磨きによる手への血液汚染率は,保護者が15.1%で,歯科衛生士が18.9%で,有意差がなかった.手への血液汚染部位は,指先が1.9~11.3%の頻度で認められたが,他は左手掌側の掌部のみに1.9%の頻度で認められた.
  スクラビング法の実施と歯肉の健康の維持は,介助歯磨き時の血液感染疾患の感染リスクを減少させるが,完全な防止策とはならないので,現段階では介助者は歯磨き時にグローブの着用が重要であることがあらためて示唆された.

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© 2012 一般社団法人 日本環境感染学会
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