2013 年 28 巻 5 号 p. 273-279
歯科診療において,患者周囲環境は高率に病原微生物に汚染され伝搬リスクとなることが知られているが,効果的な消毒法は確立していない.そこで当院歯科口腔外科外来歯科診療ユニットにおける細菌学的環境調査を行い,有効かつ実践的な消毒法を検討した.
一日の診療終了時にアルコールタオルによる清掃・消毒を行い,その直後に診療ユニット表面をスワブ拭い取りによる細菌培養検査を施行した.その結果,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌およびα溶血性レンサ球菌等の細菌が多数検出された.アルコールによる拭き取り清掃・消毒の強化・徹底を行ったが,汚染状態の明らかな改善は認められなかった.そこで次亜塩素酸ナトリウムに浸したガーゼによる拭き取り清掃・消毒に変更したところ,検出菌量の減少を認めた.さらに清掃消毒の困難な部位(複雑な凹凸面等)に対して携帯型パルス紫外線照射装置を併用したところ,標的細菌の検出は認められなくなった.
結論として,歯科診療ユニットの拭き取り清掃・消毒は消毒薬としてアルコールでは不十分で,次亜塩素酸ナトリウムが効果の面でより適していると判断された.さらに拭き取り清掃・消毒が困難な複雑な表面構造部位に対しては,携帯型パルス紫外線照射装置の併用が有効であった.