日本環境感染学会誌
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報告
複合型塩素系除菌・洗浄剤の各種環境表面素材に対する影響に関する検討
岡上 晃小澤 智子小倉 憂也野島 康弘菊野 理津子白石 正
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2015 年 30 巻 5 号 p. 325-330

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抄録

  ペルオキソ一硫酸水素カリウムを主成分とする複合型塩素系除菌・洗浄剤(RST)が病院で使われている機器などの素材に対して腐食性を有するか否かについて,0.1%次亜塩素酸ナトリウム液(0.1%NaOCl)および日本薬局方消毒用エタノール(EtOH)と比較試験を行った.腐食性の影響を調べる素材として,ステンレス(SUS304),銅,アルミニウム,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリカーボネート,アクリル,ポリスチレン,ラテックスゴム,シリコンゴムを用いた.実際の使用方法とは異なるが,これらの素材を各消毒液に7日間浸漬して素材表面を観察した.その結果,通常使用の2倍濃度である2%RST調製液は銅に対し浸漬1日後に,またアルミニウムに対し浸漬2日後にそれぞれ変色および光沢消失の影響を与えたが,その他の素材に対しては浸漬7日後においても外観的な影響を与えなかった.一方,0.1%NaOClは浸漬3日後にステンレス,銅,アルミニウムに対し影響を与えた.また,EtOHは浸漬1日後にアクリルを白濁させ,浸漬3日および7日後の重量測定では重量増加が認められた.以上,RSTは金属あるいは樹脂素材に対する影響が少ないことから感染リスクの高い透析室,手術室等の医療機器表面および感染性の高い病原微生物が検出される部署の環境表面の衛生管理に有用な除菌・洗浄剤であると考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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