2019 年 34 巻 1 号 p. 21-27
近年の交通網の発達や社会環境の変化とともに,新興・再興感染症はいつ国内に持ち込まれるかわからない脅威となっている.しかしながら,容易に伝播し重症化する新興・再興感染症の輸入例であったとしても,初発症状は発熱や呼吸器症状など国内で普通に見られる感染症と何ら変わりがないことが多く,医療機関での初診時のチェックをかいくぐり,しばしば院内感染や市中への感染拡大の可能性をはらむ.
常に決め手になるのは「疑う」ことであり,旅行歴を含む詳細な病歴の聴取や適切な時期の適切な検体を正しい方法で採取して診断に足る検査を行うことである.また,患者と対峙する医療従事者は日頃から必要な予防接種を確実に受けておき,まずは標準予防策を徹底してこれらの感染症に備える必要がある.さらに,確定診断の後は感染源や感染経路の特定により自らへの感染予防と拡大の防止に繋げなければならない.
我々は,麻疹や中東呼吸器症候群(MERS),インフルエンザA(H7N9)など国内外で見られた過去の事例に学び,院内感染する輸入感染症に対して「感染制御におけるBest Practice」を実施する使命があると考える.