日本環境感染学会誌
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報告
他院からの持ち込みによる多剤耐性菌院内伝播の防止を目的とした転院・緊急入院患者のスクリーニング培養検査
鹿間 芳明山下 恵山口 直紀市川 雄一清水 祐一陸川 敏子秋葉 和秀今川 智之
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2019 年 34 巻 1 号 p. 62-66

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抄録

当院では多剤耐性菌持ち込みによる院内伝播の防止を目的として,他院からの転院患者,および他院で治療歴のある緊急入院患者を対象とした入院時のスクリーニング培養を開始したので報告する.原則として入院当日に,担当医から説明文に沿って説明し同意を得たのちに,スワブで便検体を採取して培養した.対象菌種はカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE),バンコマイシン耐性腸球菌(VRE),メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とし,いずれも選択培地を用いた.CRE選択培地でコロニー形成が見られた場合,確認検査を行ってカルバペネマーゼ産生菌(CPE)であることを確認した.2016年12月から2017年11月までの1年間で,245人に対して260回のスクリーニング検査を施行した.陽性例はCPE2件(0.8%),VRE0件,MRSA23件(8.8%)であった.CPE陽性患者はいずれも他院から手術目的で転院された患者で,入院時から退院時まで,手術室内を含めて接触感染予防策を継続して行うことができた.

スクリーニング開始に先立ち,検査室の負担や予算の検討,医師・看護師への説明等を十分に行ったことにより,開始後も大きな混乱なく検査を継続できている.少数ではあるが陽性患者が見つかっており,持ち込み防止のためのスクリーニング検査は有用である可能性が示唆された.

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© 2019 一般社団法人 日本環境感染学会
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