日本環境感染学会誌
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報告
小児患者の推定薬物動態パラメータを用いたバンコマイシン塩酸塩の初期投与量に関する検討
岡本 剛古谷 絵茉里廣瀬 翔子濱田 洋通小林 恵美子
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2020 年 35 巻 4 号 p. 151-156

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抄録

2016年に抗菌薬TDMガイドライン改訂版(guideline:GL)が発表され,バンコマイシン塩酸塩(vancomycin hydrochloride:VCM)の小児用量(GL小児用量)が設定されたが,実臨床で用いるには検証が十分ではない.そこで,VCMを投与した小児患者の推定薬物動態パラメータを基に,GL小児用量の妥当性を評価した.実際のVCM投与量(実投与量)の中央値は41.7 mg/kg/日であり,血中VCM濃度の投与直前値(トラフ値)は実投与量の場合と比較し,GL小児用量に従って投与することで10 μg/mL以上,15 μg/mL未満への到達率が10.5%から38.6%へ上昇すると推定され,GL小児用量は有用と示唆された.ただし,GL小児用量では実投与量と比較し,トラフ値15 μg/mL以上の割合が3.5%から28%へ上昇すると推定され,生後1か月-12か月および7歳-12歳で腎機能障害のリスクが高い症例では1日量は同量で分割回数を1回削減した投与方法も選択肢の1つと考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本環境感染学会
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