2012年12月,M県の療養型病院においてノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが起きた.発症者は,入院患者30名(死亡6名)と職員14名であった.発症患者の平均年齢は82.0歳,基礎疾患は脳血管疾患が25名(83.3%)で,介護度は要介護4以上が28名(93.3%)を占めた.栄養補給路として経管栄養を受けていた者が26名(86.7%),うち胃瘻を造設されていた者が21名(70%)であった.症状では,発熱16名(46.7%),嘔吐19名(63.3%),下痢26名(86.7%)であった.ノロウイルス検査は11名に実施し,陽性者は6名であった.死亡患者6名は全員寝たきり状態であり,死因はすべて誤嚥性肺炎であった.アウトブレイクは複数の病室で同時多発的に起きたが,同一病棟に集中的に発生していた.発症者の多くが脳血管障害後の要介護患者で胃瘻を通じて経管栄養を受けており,胃瘻部から噴出した吐物で汚染した医療者の手を介した接触伝播が推定された.二項ロジスティック回帰分析により,要介護4以上,胃管,胃瘻が独立したリスク因子として挙げられた.ノロウイルス流行期には胃瘻およびその周辺の清潔保持,操作時における患者毎の手袋交換・手指衛生を確実に実行すべきであると思われた.