環境感染
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集団予防接種時に発生した接種事故後の対応処置
藤瀬 清隆斎藤 篤小林 正之伊藤 文之久保 政勝柴崎 敏昭
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1999 年 14 巻 2 号 p. 111-113

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抄録

集団予防接種時に発生した接種事故後の具体的な対応処置について報告し, 対応上の留意点につき専門医の立場より考察した.1997年6月に千葉県柏市の中学校において行われた, 小・中学生62名のBCG集団接種終了後に接種人数と接種に使用した管針の数が一致せず, 1本の管針による複数人接種の事故発生の可能性が示唆された.緊急対策会議の設置と父兄説明会開催後, 事故発生1週間目に対象者全員の採血を行い, 肝機能 (GOT, GPT, γGTP) とHBs抗原, HBs抗体, HCV抗体, HIV抗体の各検査を施行した.その結果, HBs抗原陽性者1名が確認されたため, B型急性肝炎の発症予防を目的に希望者にHBワクチンを2回施行した.また, 経過確認のため事故発生後1, 2, 3, 6ヵ月目に上記血液検査を再施行した.いずれの血液検査の結果においても, 病的意義のある肝機能検査の異常者, HBs抗原, HCV抗体, HIV抗体の陽転者は見られなかった.以上の経過と処置から, 本人, 保護者の精神的動揺を考慮し, 行政, 学校, 医師会との密な連携のもと, 1日でも早い具体的な対応処置についての説明, 事故発生に対して不信感を抱く保護者を納得させるための地域医療の中心となる機関と感染対策あるいは肝臓疾患専門医の参加, 対象者全員の協力による初回の血液検査の実施, 結果報告に際して対象者のプライバシー保守に対する十分な配慮, などが重要であると考えられた.

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