環境感染
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大学病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による院内感染の細菌学的ならびに疫学的解析
大堀 直美北目 文郎
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2000 年 15 巻 4 号 p. 295-305

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抄録

標準的な院内感染防止対策を講じてはいるものの, MRSAによる院内感染流行の実態が未解明であった一大学病院におけるMRSAの流行状況を把握するため, 1995年9月以降の約4年間に対象施設の5つの診療科で分離された215株のMRSAの染色体DNA型, 抗生物質感受性型およびコアグラーゼ型, ならびに起因菌分離の疫学的背景に基づき院内感染の有無および流行の規模, ならびに流行に関与した因子を考察した.
215株のMRSAは34種のDNA型に分類されたが, この中の9型のMRSAが5つの診療科のどこかで流行を起こしていた. 5つの診療科の全てで4~6種のDNA型のMRSAによる流行が発生 (4年間の総数: 23例) し, 流行に巻き込まれていた患者と医療従事者の総数は133名に達していた. 特にDNA型がA1, A2, A4およびD1型のMRSAによる流行は, それぞれの型の同一起因菌の株が診療科の垣根を越えて複数の診療科に拡散し, 多くの患者を巻き込んだ規模の大きな流行であった. 5つの診療科を対象とした流行状況の解析により, 対象施設におけるMRSAの流行には患者の転病棟やICU入室歴および医療従事者を介した起因菌の伝播が深くかかわっていた疑いが認められ, MRSAの流行におけるこれらの背景に対する見直しが今後の課題として示された.

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© 日本環境感染学会
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