2004 年 19 巻 4 号 p. 451-457
当院の感染対策室は平成13年度にMRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) が多く分離された泌尿器科・皮膚科混合病棟の看護職員に対して感染対策を強化した. しかし, 一時的に対策が良きにせよ継続できず, 平成15年3月以降にはMRSA分離患者数が増加した. 今回, 医師と看護師の業務上使用頻度が多いシャワーベッドによるMRSA接触伝播経路を遮断し, 皮膚疾患患者の身体清潔診療看護を安全に行うことを目的に感染防止対策を行った. 意識調査から診察・治療・ケアの前や他患者の処置に移る前には手洗いが少ない. また約70%以上が感染症及び易感染患者のケアや処置時, 感染性排泄物接触時, 粘膜・傷接触時に手袋を使用していた. 経時的参与観察に基づいて身体清潔ケア及び診療行為時の問題点を把握し, 薬浴室内で包交中の動線確保が困難である87.5%が最も多かった. そこで, シャワーベッドを用いる皮膚疾患重症例に対して, 接触伝播防止策として感染症患者専用薬浴室における身体清潔チェックリストを作成した. 環境調査では薬浴室で洗剤・洗浄後の使用直前のシャワーベッドから2回MRSAが分離された.シャワーベッドに消毒用エタノールを瞬間的に噴霧して拭き取る方法はMRSA接触伝播経路の遮断に有効であった. 感染防止対策後, 職員が標準予防策に対する意識を高め, MRSA院内感染対策ガイドラインの内容と遵守を再認識し, MRSA新規分離発生患者数が全く無くなり安全に活動ができた.