環境感染
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感染リスクがない小児から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の薬剤感受性および分子疫学的検討
坂田 宏
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2004 年 19 巻 4 号 p. 458-461

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抄録

対象は2002年9月から2003年2月までに喘息や気道感染症のために当院を受診し, 上咽頭スワブが採取された0歳から14歳までの児から検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 10株である. 臨床症状および経過からMRSAが感染の原因と考えられる児はなく, すべて保菌者と考えられた. 検出されたMRSAのパルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) の成績では7種のパターンが認められ, 2種が同一ないし類似していると考えられるパターンであった.そのうちの1パターンでは同一の保育施設に通園している3名から得られたものであり, 17種類の抗菌薬における感受性パターンでも2名ではすべて一致, 1名で1剤のみ異なるという成績であった. 2名が類似していたもう一つのパターンは, 抗菌薬感受性において3剤で差があり, その2名の生活圏に接点は認められなかった. 今回の対象にNICU出身の0歳の児も含まれていたが, PFGEも抗菌薬感受性も他の児とは異なっていた.
市中に拡散しているMRSAの伝播の要因の一つに保育施設での接触感染が疑われた. NICUから退院した児がその感染源になっているという根拠は得られなかった.

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