環境感染
Online ISSN : 1884-2429
Print ISSN : 0918-3337
ISSN-L : 0918-3337
病院給湯設備におけるレジオネラ汚染とその除菌
宮本 比呂志池野 貴子吉村 博子谷口 初美松本 哲朗
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 19 巻 4 号 p. 483-490

詳細
抄録

レジオネラによる院内感染の主な感染源は病院の給水・給湯設備である. しかし, 我が国では病院給湯設備のレジオネラ汚染と除菌についての詳細な報告はなく, その実態さえ不明である. 産業医科大学病院において2003年7月に病棟の特別浴槽シャワーヘッドよりLegiomella pmeumophilaが検出され, 追加調査で貯湯槽からもL.pneumophilaが検出された. 中央循環式の給湯設備であることより設備全体の汚染があると判断し, 1年間に渡り汚染調査と除菌作業を繰り返した. この調査・対策期間中に合計52箇所でのべ119回の培養検査を行い, 迅速な除菌対策のため必要に応じPCR法も併用した. 培養検査で15箇所のべ18検体から汚染が検出され, その内訳は貯湯槽3箇所, 末端給湯栓8箇所, シャワーヘッド4箇所であった.これらからの分離株はパルスフィールド電気泳動により3つの遺伝子型にしか分類できず, 汚染が給湯水の循環により施設全体に拡がっていたことが示唆された.除菌対策として (1) 給湯水を75℃ で24時間循環させながら末端給湯栓類 (983箇所) で放水を1年に1回行うこと (2) 貯湯槽の清掃 (3) 給湯水温を66℃ に上げて維持管理することを実施した. その結果, 汚染は検出限界以下 (5CFU/100mL) に除去できた.この期間中にレジオネラ肺炎の院内発生は認めず, 水道料金や灯油料金の負担が除菌対策に伴って増えることはなかった. 給湯水の昇温循環運転と末端給湯栓類からの放水作業は安価で有効な除菌法であった.

著者関連情報
© 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top