環境感染
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特定抗菌薬使用許可制の導入に関する臨床的検討
藤田 芳正山崎 芳郎
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2005 年 20 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

MRSAなどの耐性菌の増加防止には, 広域スペクトルをもつ抗菌薬の適正使用が必要とされているが, 院内の全ての臨床医に適正使用を求めることは現実的にはかなりの困難を伴う. かつ, 何が適正なのかという具体的なガイドラインも必要である.
当院では, 平成12年11月よりカルバペネム薬, 第4世代セフェム薬, シプロキサシン (点滴用, CPFX) および抗MRSA薬などの特定抗菌薬の使用に際し使用届け出制度を導入した (使用制限はせず). さらに平成14年3月より, 多剤耐性緑膿菌の出現を契機に, これら抗菌薬の使用に際して使用許可制を導入し, ICDの許可を必要とした.この使用許可制導入後, 2年が経過した現在, 当院での抗菌薬使用量は, カルバペネム薬の使用量は10分の1以下に減少し, かつ抗MRSA薬の使用量も半減した. 同時に, 当院で検出される各種検体別細菌の検出頻度と, 各抗菌薬に対する感受性表を基盤とした「当院の抗菌薬使用マニュアル」も作成した.
更にICT回診などにおいて広域抗生剤の使用にあたっては, 常に感染のフォーカスはどこか, 推定される菌は何か, それに対して適切な抗菌薬は何かといった質問を医師に問いかけ, ディスカッションをしながら感染症治療を行った.また, MRSAが検出された時には, 『本当にMRSAの感染症なのか, Colonizationに過ぎないのか』を主治医と議論しつつ治療にあたった.こうした結果, 当院での抗MRSA薬の使用量は半減すると共に院内のMRSA感染率・MRSA保菌率の割合も年々減少傾向を認めた. また, 今のところ新たな他の多剤耐性菌の増加や出現も見られておらず, 抗菌薬の適正使用に向けたコントロールは, 耐性菌増加の抑制, 感染症教育にも有用な手段であると考えられた.

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© 日本環境感染学会
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