環境感染
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NICU感染対策としての監視培養の一事例
池野 貴子田邊 忠夫村谷 哲郎小竹 友子白川 嘉継谷口 初美松本 哲朗
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キーワード: セラチア, 保菌, 監視培養
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2005 年 20 巻 1 号 p. 55-63

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抄録

産業医科大学病院ICG (Infection Control Group) 委員会 (現病院感染防止委員会) は, 2001年9月から約4ヵ月間, 同病院NICUにおいて色素産生性Serratiar marcescensによる集団保菌 (感染症は未発症) を経験した. 当該事例は, 患者の臀部清拭用消毒綿 (0.01%ハイジール®含有) と, それを保管した湿布缶が汚染源となり, 職員の手指を介し患者間に伝播したと推測された. 種々の対策を講じた結果, 2002年1月に保菌者は0名となり, 2002年3月ICG委員会において終息とみなした. 対策の1つであった患者の監視培養を解析した結果, 2001年8月から2002年1月まで, 1791検体中316検体 (17.6%) からS. marcescensを検出した. 便と咽頭からの検出率が高く, ピーク時にはそれぞれ59.4%と64.5%であった. 薬剤感受性試験結果から, ceftazidime, amikacin, levofloxacinに感受性で, 多剤耐性菌ではなかった. 入院後S. marcescensを検出するまでの日数は, 平均11.0日であり, S. marcescensを単独で検出した割合は, 33.5%であった. 監視培養結果の病棟一覧表作成と病棟への迅速な情報提供が, 対策を講じる際有用であり, NICUにおける感染対策の手段として, 監視培養の重要性が示唆された事例であった.

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© 日本環境感染学会
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