2005 年 20 巻 2 号 p. 85-90
看護ケアに用いられている種々のプリコーションガウンを対象として, MRSAのガウン裏側への透過性を時間毎に検討した. その結果, 撥水性のないコットン35%・ポリエステル65%のガウンではMRSA付着直後からガウン裏側へ透過したのに対し, 撥水性のある一層性不織布と三層性不織布のガウンでは付着2時間後まで菌の透過がみられなかった. また, プラスチックガウンでは付着24時間後まで菌の透過はみられなかった. 次に, 体位交換などの看護ケアにより生じる摩擦を撥水性のガウンに加えたとき, MRSAの透過性が変化するかどうかを調べた. 看護者が患者の上半身および下半身を水平移動する際に生じる摩擦とほぼ同じ摩擦力を各ガウンに加えたところ, 一層性不織布と三層性不織布のガウンではMRSAの透過性が著明に増加することがわかった. 一方, プラスチックガウンは摩擦を加えてもガウン裏側への菌の透過はみられなかった. これらの結果より, 撥水性のある一層性不織布と三層性不織布のガウンは, 看護ケアで生じる摩擦が加わることにより, ガウン裏側へMRSAが透過し感染を広げる危険があることが示唆された.