環境感染
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消化器外科手術における手術部位感染のリスク因子の検討
内海 桃絵山田 正己清水 潤三宮本 敦史梅下 浩司小林 哲郎門田 守人牧本 清子
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2007 年 22 巻 4 号 p. 294-298

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抄録

消化器外科手術サーベイランスデータから, 対象者の背景因子やドレーン留置, 抗菌薬の使用について記述し, 症例数の多い胃手術, 胆嚢手術, 結腸手術におけるSSIリスク因子について検討した. JNISに準じたSSIサーベイランスを2003年7月から2005年7月の期間実施した. 手術時間は各手術の75パーセンタイル値以上を長時間手術とした.
全体のSSI発生率は13.6%であり, 上部消化管手術に比べ下部消化管手術が高かった. 多変量解析の結果, 胃手術では長時間手術 (OR=2.595%CI;1.5-4.2), 術中抗菌薬追加投与あり (OR=1.795%CI;1.0-2.9), 結腸手術では創分類 (OR=3.395%CI;1.8-5.9), 人工肛門造設 (OR=2.295%CI;1.1-4.7), 長時間手術 (OR=2.095%CI;1.3-3.1), 絹糸の使用 (OR=1.995%CI;1.1-3.2) がリスク因子であった.胆嚢手術では創分類3以上 (OR=3.2) がリスク因子で, 内視鏡外科手術 (OR=0.3) はSSIの予防因子であった.
欧米での報告と同様の因子が抽出された.長時間手術の指標は, 日本の手術時間分布の75パーセンタイル値が適切であることが示唆された. 欧米とは医療環境が異なるわが国におけるSSIリスク因子を明らかにすることは, SSI予防の観点から有用なことと考える.

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© 日本環境感染学会
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