環境感染
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院内感染における伝播経路に関する検討
MRSAと緑膿菌について
佐藤 隆志広瀬 崇興小六 幹夫熊本 悦明小林 宣道浦沢 正三上原 信之大水 幸雄
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キーワード: 伝播経路, 緑膿菌
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1992 年 7 巻 2 号 p. 1-7

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抄録

我々の病棟において, 一時期に尿および創感染からのMRSA分離頻度が増加したため, その主たる伝播経路を調べる目的でMRSA感染患者の周囲, 行動範囲内の手の触れる各場所, 患者と接触する主治医, 看護婦の手指および鼻腔などから菌の検出を試み, その伝播経路に関して検討した. また, 比較の意味で緑膿菌感染患者についても同様に検討した.
1) MRSA感染患者では, 患者の腹部皮膚, 患者鼻腔, 患者の留置カテーテル表面, 主治医の手指から同じコアグラーゼ型で, しかも同じ抗菌薬感受性パターンを示すMRSAが検出された.
2) 緑膿菌感染患者では, いずれの部位からも緑膿菌は検出されなかった. 以上より, 交叉感染の媒介に手指などが関与するという可能性は, 緑膿菌よりもMRSAで高いことが示された. したがって, もっとも基本的な手洗いと, 無菌的処置操作の徹底, 環境消毒がMRSA感染対策において重要であるということが改めて示唆された.

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