予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
児童期双極性障害と神経発達症との併存・鑑別
岡田 俊
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2024 年 9 巻 1 号 p. 38-42

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抄録
児童期のうつ病は、抑うつ気分よりも焦燥が前景にたち、自然軽快、再燃共に多いこと、抗うつ薬の投与により自殺関連事象が出現するなど、双極性要素を有することが指摘されている。他方、児童期双極性障害は、気分変動が急速であり、不機嫌が前景にたつことが指摘されている。児童期双極性障害への注目の一方、過剰診断の可能性も指摘され、追跡研究の結果を踏まえ、かんしゃくを前景とする一群は重篤気分調節症として抑うつ障害群に分類されるようになった。気分変動は行動上の障害を伴いやすく、神経発達症との類似性が指摘される。一方、神経発達症と双極性障害の併存も高率である。併存例では、衝動行為や自殺のリスクも高く、相乗的に日常生活機能を低下させる。そのため両者の併存の可能性を積極的に診断することは重要である。しかし、神経発達症としての治療と双極性障害としての治療は方針が異なることからも、どちらの障害が前景にあるのかを正確に把握する必要がある。そのためには、家族歴、既往歴、病歴などの多様な臨床情報に基づく見たてが重要である。
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© 2024 日本精神保健・予防学会
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