Japanese Journal of Endourology
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特集1:光力学診断の新展開~光の先に何が見えるのか~
5-アミノレブリン酸を用いたPDD,PDTの現状と将来
田中 徹石塚 昌宏小倉 俊一郎井上 克司
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2011 年 24 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

 5-アミノレブリン酸(ALA)は天然のアミノ酸で広く動植物に含まれ,クロロフィルやヘムの前駆体として重要な役割を果たしている.ALAは通常の食品にも含まれ食品を通じて摂取しており,我々人間の体内でもALAは1日700mg程度生成,消費されていると考えているが,これを上回る量のALAを外生投与するとヘムの前段に当たるプロトポフリリンIX(PPIX)が蓄積する.特にがん細胞においてはPEP-T1などのALA取り込みが亢進しており,また,解糖系にエネルギー生産を依存するためヘムの要求量が低く,その結果,正常組織よりPPIXの蓄積が高い.ALA自身は蛍光を示さないが,代謝物であるPPIXは蛍光物質であり,PPIXの光増感性を利用した光動力学的治療(PDT)や診断(PDD)が盛んに研究され,海外では皮膚がんの治療や脳腫瘍の術中診断などではすでに実用化している.ALAを用いたPDT,PDDはALAやPPIXが内在物であるため,他の増感剤と比較して代謝,排出が早く,光毒性の問題がほとんど起こらない.光毒性の問題がないALA-PDT,PDDは,泌尿器科領域はもちろん,多くの分野でがんの診断,治療に用いられるものと期待されている.

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© 2011 日本泌尿器内視鏡学会
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