Japanese Journal of Endourology
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特集2:小児腹腔内精巣─どう扱うか?
序文
佐藤 裕之山崎 雄一郎
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2018 年 31 巻 1 号 p. 32

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抄録

 停留精巣は男児100人当たり1人程度のきわめて頻度の高い小児泌尿器科疾患の一つであり, 多くは陰嚢高位から鼡径管部に存在し触知可能である. しかし, 停留精巣の約20%を占める非触知精巣は画像検査等での局在の確認も容易でないことが多く, これをいかに診断および治療を行うかはまだ議論が多い. さらに腹腔内に精巣が確認された場合, この治療に関しても明確な指針があるわけではなく, 患児の全身状態, 片側であるか両側であるか, 停留精巣の呈する原疾患の有無, 精巣の機能予後を考慮して, 術者の判断で治療が使い分けられているのが現状であると考えられる. この一つの手段が腹腔鏡下精巣固定術であるが, この術式も一期的/二期的, 精巣血管の処理の有無など細部で異なる方法がとられており, 現時点でこの方法が絶対的な術式であるというコンセンサスが得られているわけでないためこれから手術を行う方に混乱をきたす可能性がある. 腹腔鏡下精巣固定術において血管を処理の有無にかかわらず精巣萎縮をきたす可能性があり, 血管の結紮処理を行うFowler-Stephens法では10-20%に及び, 開放下手術の時代の30-40%の手術成功率に比しては改善しているといえるが, 精巣を温存するのみならずその機能予後を改善するというのであれば, 精巣の状態でその術式選択を十分に考慮する必要がある.

 そこで本稿では小児の非触知精巣にどう対応するかを山崎雄一郎先生に概説していただきながら, 精巣血管温存をめざした腹腔鏡下精巣固定術について水野健太郎先生に, 一期的腹腔鏡下Fowler-Stephens法を多田実先生に, 二期的腹腔鏡下Fowler-Stephens法を高橋正幸先生に症例を踏まえて説明いただき, それぞれの手術の利点と欠点を明らかにしていただいた.

 腹腔鏡下精巣固定術は精巣を陰嚢内に固定し精巣の機能予後を改善する術式であることを理解していただいた上で, 腹腔鏡下精巣固定術の施行を考慮された場合, どのような点を評価し, どの術式で行うかの指標になれば幸甚である.

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© 2018 日本泌尿器内視鏡学会
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