Japanese Journal of Endourology
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特集2:小児腹腔内精巣─どう扱うか?
腹腔内精巣への手術対応 : 一期的F−S法施行腹腔鏡下精巣固定術 (1sFSLO) を含めて
多田 実後藤 俊平家崎 朱梨船越 大吾堀 祐太郎川嶋 寛大橋 研介古屋 武史植草 省太
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2018 年 31 巻 1 号 p. 44-50

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抄録

 【目的】腹腔内精巣は診断, 手術が困難な疾患の一つである. 腹腔内精巣の精巣固定術を成功させるため, 手術に適した分類と新しい治療体系を作成し, 臨床的に有益な情報となりえることを目的とした. その中で一期的F-S法施行腹腔鏡下精巣固定術 (1sFSLO) の手術適応および条件と方法, 成績も検討した.

 【対象】現在まで111精巣 (111T : Testis) の腹腔内精巣手術を腹腔鏡下もしくは腹腔鏡補助下に施行してきた. 腹腔内精巣を存在位置により腎部精巣 : K, 中間部精巣 : I, 内鼠径輪部精巣 ; DIRに分類すると, それぞれK 5T, I 31T, DIR 66Tであった. DIRはさらに P : Proximal J : Just D : Distalに細分類した.

 【方法】診断は麻酔下での触診, 鎮静下でのUSとMRIとした. 精巣温存判定は片側例では超音波による精巣容積測定 (V) で行い, 患側V/健側V×100とした. 両側例は絶対値とした.

 【結果】術後精巣温存率は全体で88.3%であり, 術式別ではLO 98%, 1sFSLO 62%, 2sFSLO 83%となった. 存在部位別腹腔鏡下精巣温存率 : K 40%, I 81%, DIR 98%. 存在部位別術式別温存率はK&IではLO 75%, FSLO 75% であるのに対しDIRではLO 100%, FSLO 80% であった. DIR細分類による精巣数はP 11T/66T 17%, J 53T/66T 80%, D 2T/66T 3%であったが, DIR細分類と精巣温存率, 術式による差異は認められなかった.

 【考察】精巣位置による精巣温存目的手術法はKとIではFSLOがやむをえない選択と考えられた. DIRではLOとし, FSLOは極力行わないことである. 今後は精巣血管の切断 (FSLO) を回避するShehata法をIとDIRのうちの血管短縮タイプに導入し, 生着率を向上させていきたい. 1sFSLOの適応は①多段階手術, 多段階麻酔を避けたい場合と②精巣動脈以外の側副血行が良好な場合などであった.

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© 2018 日本泌尿器内視鏡学会
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