社会起業研究
Online ISSN : 2436-3456
サーキュラーエコノミー実現に向けたローカルプロジェクトフレームワークの考察 -「SeaFect」を題材に考える日本のモノづくり技術の可能性-
藤川 遼介
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 4 巻 p. 19-39

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抄録

当研究は、サーキュラーエコノミーを実践している事例研究から、日本のモノづくり技術が「地域振興」に与える影響を検証することを目的としている。

具体的に扱う商材は、貝殻焼成パウダーである「SeaFect」及び「SeaFect」を水溶液化し、天然素材 100%で作られた「SeaFect 水溶液」である。「SeaFect」は、オホーツク海で育ったホタテ貝の貝殻から生まれた商品である。原料となるホタテ貝の貝殻は、産業廃棄物として処理されており、活用方法が課題となっている。「SeaFect」は、世間のニーズに応えながら、この社会課題を解決することを目的に生まれた商品である。「SeaFect」は、高度独自技術で焼成し、粉末化したホタテの貝殻を用いたパウダーである。「SeaFect」を独自のミネラルバランスにこだわった水に溶解させた「SeaFect 水溶液」は、除菌・抗菌・一部の消臭・油脂分解などに優れた製品である。この「SeaFect」の事例は、限られた資源を有効活用するサーキュラーエコノミーや SDGs の考え方である。

当研究では、「SeaFect」及び「SeaFect 水溶液」を題材に「商品としての優位性」と「誕生から普及に向けての戦略」という 2 つの側面からのアプローチを行う。研究方法は、開発者へのヒアリング内容を先行研究と照らし合わせて行っていく。

調査の結果、「商品としての優位性」は、他のホタテ貝殻を活用した商材と比べて、大きく分けて 5 点の優位点が見えて来た。「誕生から普及に向けての戦略」は、先行研究である「コレクティブ・インパクト」及び「地域デザイン 7Step」に当てはめて整理を行い、いずれのフレームワークにも当てはまるプロセスを辿っていることがわかった。

結果から導いた結論は、日本のモノづくり技術は、地域における社会課題解決との相性が良く、「地域活性」に大きく貢献し、「地域振興」に大きな影響を与えるということである。この結論に加え、新しい技術を用いたモノづくり技術の誕生から普及に向けた戦略は、様々な「地域振興」に応用できるフレームワークに当てはまるといえる。

今回の研究から、持続的な「地域振興」に向けたヒト・モノ・コト、それぞれにおいてフレームワークが確立されたといえる。ヒトの関係性を明確化する整理手法は、今回の調査において、第三者機関への進捗報告が、必ずしも関係者とは言い切れない出資者であることがわかった。このような結果から、民間企業中心の「地域振興」においては、「コレクティブ・インパクト」の考え方が該当することもあり、地域住民や自治体中心となった「地域振興」は、「日本版コレクティブ・インパクト」が当てはまることが多いといえる。モノを生み出す思考法は、「ニーズを調査する」、「有効的な資源を探す」、「地域資源(産業廃棄物)に着目する」、「実験を行う」、「製品化を実現する」というプロセスが大切だということである。このプロセスを実行していくためには、地域を良くしていくために探求する「ローカルクエスト思考」が大切となって来る。コトのプロセスは、今回の調査にも当てはまった先行研究の「地域デザイン 7Step」が当てはまる。

このようなことから、この3つのフレームワークを総じて、「ローカルプロジェクトフレームワーク (Local Project Framework)」と命名し、今回の研究から新たな持続的な「地域振興」に向けたフレームワークモデルが確立したといえる。

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© 2024 相模女子大学専門職大学院社会企業研究科
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