抄録
現在,小学校3, 4年生の国語科では,2つのローマ字表記法(訓令式・ヘボン式)が指導されている.その後小学校5,6年生になると,英語の読み書き学習が開始される.同じアルファベット文字を用いながら,訓令式ローマ字,ヘボン式ローマ字,英語の綴り規則はそれぞれ異なるため,混乱を示す児童生徒がいることが問題視されている.本研究では,規則性が高く日本語の音素体系を理解するのに適している訓令式と,英語の規則を反映したヘボン式を音素レベルで対比的に捉えることで,2つの表記法間の混乱を解消するだけでなく,その理解をベースとして,英語そのものの特徴に関する気づきを促すことを目指した.具体的には,2つのローマ字表記法の相違が,日本語と英語の音素体系や,音と文字の対応規則の違いに起因することに着目して指導法を考案し,教材化を行った上で,中学校1年生に試行的な授業実践を行った.その結果,授業前後で,ヘボン式ローマ字の綴りの正確さ,およびローマ字や英語に関する認識課題の得点が有意に向上することが示された.これらの結果を踏まえ,今後の研究および実践の方向性について展望する.