日本食品工学会誌
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食品ハイドロコロイドの水和と力学物性
池田 新矢
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2010 年 11 巻 4 号 p. 161-168

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抄録

多糖やタンパク質といった食品高分子が水和して形成される食品ハイドロコロイドの構造と力学物性について解説した.食品高分子ゾルが流動する際には流動速度の増加に応じて粘度が減少する「ずり流動化」を示すことが多いが,その原因は流動に伴う食品高分子の3次元構造の変化である.流動速度が低い場合に観測される高い粘度は,ゾルに分散した不溶性の粒子の浮上もしくは沈降を遅らせるのに有効である.ゾルそのものを移送する場合には流動速度を増加させれば水と同程度まで粘度を減少できる.食品高分子ゾルは降伏応力を有する場合があり,降伏応力の大きさが十分大きければ不溶性粒子の浮上もしくは沈降は起こらない.原子間力顕微鏡観察により明らかとなったジェランガムゲルの網目構造は,複数の分子鎖が会合して形成された剛直棒状の網目紐が両端で架橋された構造であり,エントロピー弾性とは異なる機構により弾性が発現すると考えられる.

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© 2010 一般社団法人 日本食品工学会
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