日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
解説
高分子ゲルの膨潤特性とその制御
﨑山 高明
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 12 巻 2 号 p. 47-53

詳細
抄録

高分子ゲルの膨潤特性の理解は,ゲル状食品の各種物性の理解と制御に重要である.本稿では,pH応答型の膨潤特性をもつ高分子電解質複合ゲルを主な題材として,高分子ゲルの膨潤挙動とその機構について述べた.pHなどの環境条件の変化に応答して体積が変化する高分子ゲルは,薬物放出制御素子などのインテリジェント制御素子として有用であるが,その研究対象はほとんどが合成高分子であり,天然高分子の研究例は極めて少ない.本稿ではまず,天然高分子を素材とする高分子電解質複合ゲル調製法を紹介し,調製されたゲルの膨潤特性を解説した.また,ドナン平衡に基づく荷電ゲルの膨潤特性の解析理論を紹介するとともに,複合体化に伴って荷電性官能基の酸解離特性が変化することを示す解析結果について述べた.膨潤速度については,荷電のないゲルでは高分子鎖の協同拡散が律速となるのに対し,荷電ゲルでは対イオンの拡散が律速となる研究結果を紹介した.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本食品工学会
次の記事
feedback
Top