日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
ISSN-L : 1345-7942
WTO農業交渉の動向―各国の利害対立の構図―
並河 良一
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 6 巻 3 号 p. 171-179

詳細
抄録

行き詰まっていたWTO農業交渉は2004年8月に枠組み合意が成り, モダリテイ合意, 協定締結に向けて動き始めた.しかし農業交渉の3つの論点―市場アクセス, 国内助成, 輸出競争―のいずれにおいても主要国の利害が多岐に分かれており, また, 論点により利害関係の構図が異なっている.このような利害関係の錯綜の故に, WTO枠組み合意は, 利害関係国 (グループ) の主張を矛盾しないように組み合わせたにとどまり, 対立点の解決を今後の交渉に委ねて, 先送りに近い形になっている.2005年12月香港閣僚会議までにあまりにも多くの交渉事項が残されている.複雑な利害関係以外にも, WTO多角的貿易交渉における価値観の多様化, FTAの急増など交渉の遅延につながる要素がみられる.今後も, 農業交渉の動向から目を離せない状況が続くであろう.

著者関連情報
© 日本食品工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top