日本食品工学会誌
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食品製造機器の衛生管理に関する基礎研究
―食品成分と微生物の機器表面への付着挙動―
崎山 高明
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2008 年 9 巻 4 号 p. 207-213

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抄録

加工・製造される食品の品質と安全性を担保するうえで, 食品製造に使用される機器および環境の衛生管理がきわめて重要であることは論を待たない.本稿では, 衛生管理対策を考えるための基礎として, 食品タンパク質および細菌の機器素材表面に対する付着挙動, さらには表面上の細菌の生残挙動に関して得られた知見について解説した.タンパク質のステンレス鋼表面に対する付着挙動については以下の知見が得られている. (1) 常温ではタンパク質は単分子層で付着し, 高温では表面上での熱凝集反応により多分子層を形成して付着量が増大する. (2) タンパク質分子内にステンレス鋼表面との相互作用の強い特定の部位が存在し、その相互作用には静電的な力の寄与が大きい. (3) 付着量は共存物質によって大きく変化し得る.細菌の固体表面に対する付着については以下の知見が得られている. (1) ステンレス鋼に対しては, 付着量が一定値に達するのに2~3時間程度の時間を要する. (2) ステンレス鋼の表面粗さが付着量に及ぼす影響は菌種によって異なる. (3) 芽胞が乾燥付着すると脱離が困難となり, とくにポリプロピレン表面においてはアルカリ耐性が高くなる.

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