日本食品微生物学会雑誌
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広島市域におけるイカ菓子を原因としたSalmonella OranienburgおよびSalmonella ChesterによるDiffuse Outbreakへの分子疫学的アプローチ
高垣 紀子橋渡 佳子伊藤 文明児玉 実石村 勝之毛利 好江河本 秀一笠間 良雄山岡 弘二荻野 武雄
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2000 年 17 巻 3 号 p. 171-180

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抄録

広島市域において, 1997年9月以降, サルモネラ属菌による散発的な食中毒事例の疫学的解析を行い, 食中毒の発生と起因菌株の動向把握を試みた.1998年末よりサルモネラO7群のS.Oranienburgの漸増傾向が認あられ, 同時期にサルモネラO4群のS.Chesterの増加もみられた.その発生は, 全国的な青森県産イカ乾製品を起因としたS.Oranienburgによるdiffuse outbreakの発生時期と一致していた.
今回, 本市での散発性食中毒とイカ菓子事例との関連性を究明するため, 生化学的性状, 血清型および薬剤感受性などの表現型別と分子疫学的解析手法であるRAPD法およびPFGE法による遺伝子型別を併用して検討した.RAPD法ではキット付属の6種類のプライマーの各パターンの組合せにより, 由来の異なるS.Oranienburgは4群に分類され, S.Chesterは3群に分類された.本市の散発性食中毒事例株およびイカ菓子関連株にこの方法を適用した結果, それらの多くは同一パターンを示し, PFGE法を含む他の疫学的解析の結果と総合すると, 本市の散発性食中毒事例が, S.OranienburgのみならずS.Chesterも関与したdiffuse outbreak事例であったと考えられた.検討したRAPD法はS.OranienburgおよびS.Chesterの迅速なスクリーニング法として実用的であった.

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