水産海洋研究
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Print ISSN : 0916-1562
原著論文
瀬戸内海燧灘においてミズクラゲがカタクチイワシ資源に与える影響の評価
銭谷 弘河野 悌昌亘 真吾
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2017 年 81 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

餌(カイアシ類)をめぐる競合によるカタクチイワシ資源へのミズクラゲの影響を評価するため,栄養塩–植物プランクトン-カイアシ類-ミズクラゲの捕食–被食動態とミズクラゲとカタクチイワシ仔魚の生残,成長過程を瀬戸内海中央部に位置する燧灘においてモデル化した.2001–2005年の春夏季のカイアシ類の変動をモデルにより再現し,ミズクラゲ分布密度とカタクチイワシの生残,成長率の関係を検討した.摂餌開始5.7 mmから体長40 mmまでのカタクチイワシの生残,成長率はミズクラゲの出現日の分布密度と反比例の関係にあり,傘径100 mmのミズクラゲが100 m3当たり10個体以上出現すると,餌不足となりカタクチイワシが生残できなくなることが示された.2007–2009年の5–8月の燧灘において,平均傘径72 mmのミズクラゲの分布密度は最大100 m3当たり10個体であり,2000年代後半において,ミズクラゲとの餌の競合によりカタクチイワシの仔稚魚の生残が低下しはじめていた可能性がある.

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© 2017 一般社団法人 水産海洋学会
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