2017 年 81 巻 1 号 p. 50-59
北海道オホーツク海沿岸でディスク型タグや水温ロガーを未成熟ミズダコに装着して標識放流を行い,移動と成長,そして経験水温を明らかにするとともに,主要なミズダコ漁場である網走市能取岬沖の海底に水温ロガーを設置して夏-冬季の漁場水温を連続観測した.ミズダコの成長は夏–秋季に速く,冬–春季に遅かった.当海域のミズダコは放流された地区で再捕される割合が86%と高く移動距離は比較的小さかったが,季節的な深浅移動は顕著で7–9月には深場へ10月以降は浅場へ移動する傾向が強かった.2013年8–9月の水深40 m以浅の海底水温は20°Cを上回ることが多く,夏季の深場への移動は沿岸の高水温の回避が目的であると考えられた.経験水温の最高値は20.1°Cで,平均値は4個体(50%)で15.0°C以上であった.本研究は当海域のミズダコ漁場水温の時空間的変化,ミズダコの移動や成長を明らかにするとともに,ミズダコの経験水温を初めて直接把握することができた.