2017 年 81 巻 3 号 p. 203-210
沿岸海域では外海と陸域からの双方の影響が混合する場として,環境の変動が激しく,また,人為的な経済活動における環境変化も加わり,複雑な環境場を有している.それら環境因子の変動が魚類等の生物量に与える影響を定量的に把握するためには数理モデルによる解析が有効であるが,数理モデルの構築に必要な生態学的な知見が不足している.本研究では,大阪湾にて漁獲されるイカナゴを対象に,統計データを用いた数理モデルの構築を目的とする.まず,最適変換法を用いて,非線形性を含む環境応答を抽出した後,その応答を定式化することで環境応答を考慮した個体群動態モデルの構築を行った.また,数が増えたパラメータの決定に対して,MCMC法を適用することで,最適なパラメータを推定した.その結果,イカナゴの個体群動態の変動に関する環境因子と漁獲の関係などの定量的な評価が可能となった.