魚病研究
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コイ科魚類の立鱗病に関する研究―III
病魚から分離されたAeromonas liquefaciensの血清学的性状について
高橋 幸則楠田 理一
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1977 年 12 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

 1. 立鱗病病魚から分離されたA. liquefaciensの血清学的性状を検計した結果,本菌のホルマリン死菌抗血清はA. liquefaciensまたはA. punctataとして報告されている菌株に対してのみに凝集素を形成し, A. hydrophilaおよびA. salmonicidaに対する凝集性は認められなかった。しかし,Aeromonas属細菌の菌株間に共通抗原を有するものがあるとの報告もあるところから,本病魚由来株の血清学的分類に関しては,さらに多くの分離株について検討する必要があると思われた。2. 立鱗病の血清学的診断法の可能性を知る目的で,凝集素吸収試験による立鱗病由来株の抗原構造をしらべた結果,同じ立鱗病魚からの分離菌株は共通抗原をもつことが明らかになった。しかし,異なった病魚からの分離菌株間,および立鱗病魚由来株の抗血清が凝集性を示したA. punctata ATCC-11163ならびにA. liquefaciens UT-62とは血清学的に異なることが判明した。したがって,本病から分離されるA. liquefaciensは血清学的に多様であることが推察され,血清学的診断は容易でないと思われた。

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