魚病研究
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アユのビブリオ病ワクチン効果に関する病理組織学的ならびに免疫組織化学的研究
早川 穣藤巻 由紀夫富沢 泰畑井 喜司雄窪田 三朗沢田 健蔵城 泰彦磯貝 誠
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1988 年 23 巻 2 号 p. 85-90

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抄録

 1.アユのビブリオ病浸漬ワクチンの感染防御機構を明かにするために,病理組織学的ならびに免疫組織化学的に検索し,併せてビブリオ病の感染機序,死因についても検討した。2.累積斃死率は攻撃菌濃度3.4×104CFU/mlの場合はワクチン処理区と対照区の差は40%であり,3.4×105CFU/mlの場合は20%であった。3.対照区ではビブリオ菌の増殖と病変が認められたのは皮膚であり,その後各臓器にもビブリオ菌の波及に伴って病変がみられた。このことから,感染機序は経皮的に侵入したビブリオ菌が真皮層で増殖し,この部位の毛細血管から菌が血中に入り全身感染に至ったと思われ,死因としては,菌血症に起因する心不全および呼吸不全が考えられた。4.ワクチン処理区では対照区に較べて肉眼的な皮膚病変を起こした個所は少なく軽度であった。組織学的には皮膚病変が遅れて生じ,真皮全層に激しい細胞浸潤がみられ,その部におけるビブリオ菌の増殖は軽度であった。これらの諸事実はワクチン効果が皮膚表皮層の抵抗性の増加と真皮層における炎症性細胞の浸潤を伴って,細菌の侵入と増殖を抑制し,その結果,効果が発現することを示唆している。

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