魚病研究
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養成シマアジにみられた黄色脂肪症の病理組織学的所見
和田 新平畑井 喜司雄窪田 三朗
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1991 年 26 巻 2 号 p. 61-67

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抄録

 1.1988年5月に東京都大島町で養成中のシマアジに発生した原因不明の疾病を病理組織学的に観察した。2.病魚は外観的に著しく痩せ, 体色の黒化も顕著であった。さらに口吻部および鰓蓋内側面に黄色斑が認められた。剖検の結果, 病魚の肝臓には褪色および萎縮がみられ, 腹腔内脂肪組織には黄色調を呈する部位が観察された。3.組織学的に, 黄色調を呈した腹腔内脂肪組織には脂肪細胞の変性および壊死, 単核性細胞の浸潤および合胞体の形成, リポ色素を有するマクロファージセンター (MC) の形成, チール・ネルゼン染色に陽性を示す変性脂質の沈着, および小型の肉芽腫の形成が認められた。リポ色素は肝臓の静脈系血管周囲に形成されたMC内, 肝細胞内, 脾臓および腎臓のメラノマクロファージセンター内, 心筋スポンジ層内皮下のMC内, 躯幹筋問の結合組織内の小動脈周囲のMC内, および幽門垂と小腸粘膜固有層のMC内にも観察された。また, 溶血性貧血および躯幹筋のミオパチーを示唆する所見が得られた。4.以上の所見から, 病理組織学的に本症例は黄色脂肪症であると判断され, 発生要因として餌料中の脂質の変敗ないしはビタミンE欠乏の可能性が考えられた。

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