1971 年 6 巻 1 号 p. 24-29
1. 立鱗病の予防免疫の可能性を知るために,原因菌の加熱死菌,ホルマリン死菌,ならびにアジュバント加ホルマリン死菌の3種のワクチンをコイに接種して,凝集素形成の有無,ならびに消長をしらべた。その結果,抗原接種後1週間目の平均凝集価は,加熱死菌接種区で1:142,ホルマリン死菌接種区で1:213,アジュバント加ホルマリン死菌接種区で1:327となった。5週間後には加熱死菌接種区で1:1,664,ホルマリン死菌接種区で1:6,875,アジュバント加ホルマリン死菌接種区で1:1,638となり,3区とも5週間後の凝集価が最も高い価となった。27週間後には加熱死菌接種区で1:19,ホルマリン死菌接種区で1:53,アジュバント 加ホルマリン死菌接種区で1:60となり,凝集価は低下した。このように,コイは A.liquefaciens-CAに対して比較的短期間に,高い凝集素を形成するが,持続性に欠けることが明らかになった。2.加熱死菌,ならびにホルマリン死菌をワクチンとして,あらかじめコイに接種したのち,1週間後,5週間後,14週間後に A.liquefaciens-CA株の生菌攻撃試験をおこなって,ワクチンの予防効果をしらべた。その結果,対照区ではいずれも100%が死亡するのに対して,ワクチン接種後1週間目の斃死率は,加熱死菌ワクチン接種区で50%,ホルマリン死菌ワクチン接種区で20%となった。5週間後の斃死率は加熱死菌接種区で30%,ホルマリン死菌接種区で10%であった。14週間後には加熱死菌接種区,ならびにホルマリン死菌種区とも40%の斃死率となり,明らかに予防効果が認められた。以上のことから,コイの細菌性の立鱗病は加熱死菌,ならびにホルマリン死菌ワクチンの接種によって,防除できる可能性があるものと思われる。