魚病研究
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Vibrio anguillarumの性状に関する考察
室賀 清邦江草 周三
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1973 年 8 巻 1 号 p. 10-25

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抄録

 著者らが分離してきたV.anguillarum 31株(PSh-3を除く)の性状をまとめてみたところ,海水株,淡水株別にみるとmethyl red, galactose,塩分耐性の点に多少違いはみられたが,他の多くの点で一致しており,それらの性状はHENDRIE, et al.のtype description,あるいはEVELYNのあげているarchtypeの性状にほぼあてはまることが確認された。しかし他の研究者の報告をも考察しながらHENDRIE, et al.の type descriptionをみていくと,彼女等の言うように+もしくは-と規定できない性状があり,さらに彼女等は特には記していない項目で,oxidase, catalaseなど+と定義付けできるものがあることがわかった。従来の魚病菌vibriosをまとめて“V. anguillarum”一種とすることには異論はないが,病原性を含めていくつかの重要な性状の違いに基づくタイプ分けの必要性があると思われた。V.anguillarumとV.parahaemolyticus, V. alginolyticusとの比較を行なったところ,前種と後二種との間にはarginine,lysine脱炭酸の点で明確な違いがあり,またNaCl7%~10%における発育に差があることがわかった。さらに前二種の間にはsucrose利用の点に違いがあり,MR, VP,2,3-butanediolの点でも例外的な株はあるにしても一応違いがあることがわかった。またこの三種につき,ウナギ,マウスに対する病原性を比較したところ,V.anguillarumはウナギに対し他の二種より強い病原性を示し, V.parahaemolyticusはマウスに対しV.anguillarumより強い病原性を示した。

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© 日本魚病学会
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