農作業研究
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中国におけるアスパラガスの生産動向と栽培体系
ザン ユーピン荒木 肇
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2017 年 52 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

アスパラガスはルチン,サポニン,多糖類や有機セレン(セレニウム)が豊富に含有される高付加価値野菜の1つである.現在,中国は世界有数のアスパラガス生産国である.それはこの約20年間での急速な生産面積拡大により,アスパラガスは中国における巨大な産業になった.1990年代初頭,中国はアスパラガスの特に缶詰の輸出国であり,生産地において主にホワイトアスパラガスが栽培されていた.90年代中盤から,中国国内でのグリーンアスパラガスの消費やお茶,ジュース,薬や粉末等の多様な加工品の重要拡大により,グリーンアスパラガスの生産が徐々に増加した.このような国内での変化は収穫若茎の国内重要の増加と輸出量の減少につながった.アスパラガス若茎の収量や生産性の向上のために,冷涼気候の中国北部において,ホワイトアスパラガス栽培はグリーン生産に転換された.一方,中国の中央部や南部では,プラスチックハウス内において,立茎栽培と呼ばれる長期生産体系が始まった.この栽培体系では約3か月育成した種苗を定植して翌年からの収穫となる.定植と収穫は手作業で,株上からの霧状散水と土壌への点滴潅漑で水が供給されている.夏の遮熱対策として,遮光ネットを配置されている.2008年の世界経済危機においてアスパラガス生産も減少したが,2009年以降回復した.茎枯病と呼ばれる病害の被害は深刻で,特に中国南部においてはこの病害が,アスパラガス生産の持続的発展を制限する重大要因になっている.茎枯病に抵抗性を有する国内品種を育成の国家プロジェクト研究が遂行されている.

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© 2017 日本農作業学会
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