院内での救急対応を契機に最重症度の再生不良性貧血が判明した症例を経験した。患者は77歳女性。既往歴に緑内障,坐骨神経痛,骨粗鬆症があり,本学歯学部附属病院総合診療科にて歯周治療中であった。1週間前より胸が締め付けられる感じがたびたびあり,当日の朝も手がしびれた後に呼吸苦があったが,来院した。待合室で胸部不快感と呼吸困難感が増強したので受付に体調不良を訴え,歯科麻酔外来に救急コールがなされた。約4分後の歯科麻酔科医到着時,バイタルサインには異常はなく,12誘導心電図でも虚血性変化などはなかった。歯科麻酔外来回復室に搬送し,1時間ほど経過してもバイタルサインに変化はなかったが,胸部絞扼感は消失しなかった。そこで,精査のために本学医学部附属病院ERに搬送した。ER到着後もバイタルサインに著変はなかったが,末梢血液一般検査で白血球数900/μl,赤血球数135×104/μl,血色素4.6 g/dl,血小板数3,000/μlと汎血球減少がみられた。ただちに血液内科にて骨髄穿刺を行い,再生不良性貧血(stage 5)と診断された。そこで,緊急入院となり,高度の貧血に対して赤血球濃厚液2単位が輸血された。その3日後,再生不良性貧血の治療のためにかかりつけ医に転院し,以降の経過は良好であった。本症例は,基本的な鑑別診断を心がけ,専門医への対診などの対応が必要であることを改めて認識させられた症例であった。