老年歯科医学
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在宅寝たきり老人の脈波伝播速度と歯科治療時の体位変換による循環変動
岡 俊一金 博和見崎 徹大井 良之原 利通根岸 哲夫山崎 一男白橋 知幸塚本 亨
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2004 年 18 巻 4 号 p. 317-322

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抄録
我々は寝たきり老人を対象に, 脈波伝播速度 (Pulse Wave Velocity: PWV) の値が, デンタルチェアー上の体位変換による循環変動と関連するかについて検討した。
対象は非観血的歯科治療を行う予定の循環器疾患を有する患者20例とし, 安静時のbrachial-ankle PWV (ba PWV) 値により, N群 (各年齢の基準値±1×標準偏差以内) 10例とH群 (各年齢の基準値±1×標準偏差以外) 10例の2群に分けた。
ba PWVの測定にはABI-formTMを用いた。また体位変換には, SironaA1のデンタルチェアーを使用し, 歯科治療開始前に水平位から坐位に変換した。体位変換時の血圧および脈拍数の測定は, 非観血式連続血圧測定装置を用いた。
その結果, ba PWVを除いて各群の年齢, 性別, 対照の血圧および脈拍数には, 両群間に有意差はみられなかった。また, 両群とも収縮期血圧および拡張期血圧は, 水平位から坐位への体位変換時に有意に低下した。さらに収縮期血圧は, 坐位時にN群 (123.4±17.5mmHg), H群 (107.7±18.1mmHg) と両群間に有意差がみられた。回復時間は, N群 (94.0±24.5秒), H群 (169.0±40.1秒) と両群間に有意な差がみられた。
一方脈拍数は, 両群とも体位変換で有意な変化はみられなかった。また両群間にも有意な差はみられなかった。
本研究より, 寝たきり老人を対象とした場合, ba PWVは, 体位変換により生じる循環変動と関連し, その予測に有効な指標になりうることが示唆された。
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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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