抄録
硬質レジン歯は, 硬度や耐摩耗性等が向上するが, 着色しやすいとの問題がある。本研究の目的は, 義歯製作時の火炎仕上げおよび研磨が人工歯の表面粗さに及ぼす影響と色調の変化を計測し, 表面粗さと着色の関連を明らかにすることである。人工歯をワックスブロックに設置 (n=30) し, 半数は人工歯歯頚部付近へ火炎を当て (火炎有), 残り半数は火炎仕上げを行わなかった (火炎無) 。次いで, 通法に従って加熱重合レジンで重合した後に, レーズを用いて粗研磨, 粗・中研磨および粗・中・仕上げ研磨までをそれぞれ行った3群 (n=5) の試料を製作した。対照試料は, 常温重合レジンに設置し重合および研磨を行わなかった。表面粗さは, 走査レーザー顕微鏡を用いてRaおよびRZJISを測定した。着色は, 紅茶抽出液浸漬前後に高速分光光度計を用いて色差を測定した。
その結果, RaおよびRZJISは各研磨過程で変化するものの, その変化は人工歯によって異なり, 研磨が有意な変化を必ず及ぼすとは言えなかった。また, 火炎の有無による影響は認めなかった。研磨および火炎が色差に及ぼす影響においては, 硬質レジン歯の一製品を除いて, 各群間に有意差は認められなかったが, 人工歯間ではUDMA系の一種の人工歯に対し多くの場合に有意差を認めた。本実験の結果から, 各硬質レジン歯内での研磨操作および火炎の有無は, 着色に影響を及ぼさないことが示唆された。