日本消化器がん検診学会雑誌
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原著
胃がん検診における胃癌高危険群の選定について─炎症性サイトカイン遺伝子多型検査併用の可能性─
由良 明彦
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2008 年 46 巻 1 号 p. 20-26

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抄録

サイトカインには産生量に影響を及ぼす遺伝子多型があり, 胃がん発症への関与が報告されている。特に, interleuikin-1beta遺伝子多型(IL-1B)やIL-1RN遺伝子多型が胃癌発症のリスクを増すことが報告されている。また, 肝臓の代表的な薬物代謝酵素であるcytochrome P-450には遺伝子多型(CYP2C19)があり, 薬物動態や薬力学への影響および食道癌, 肺癌や肝臓癌などの発症に関与することが報告されているが, 胃癌との関与の報告は少ない。現在, 血清pepsinogen測定(PG)法において陽性(カットオフ値: PG I 70ng/ml以下およびPG I/II比 3.0以下)者を胃がん発症の高危険群としている。本研究では, 胃がん検診におけるより高い高危険群の選定についてIL-1BとCYP2C19の各遺伝子多型検査併用の可能性を多変量解析より検討した。職域における胃検診受診者228名[男女比191:37, 平均年齢45.8±0.6歳(mean ± SE)]を対象とした。胃がんの低危険群と高危険群で有意差が認められた因子は, 血清抗H. pylori IgG抗体とIL-1B-511の多型頻度であり, CYP2C19の多型頻度では有意差は認められなかった。次に, これらの因子における多変量解析では, 各オッズ比は血清抗H. pylori IgG抗体70.9, IL-1B-511多型(genotype C/TまたはT/Tに対しC/C)2.50であった。以上のことから, IL-1B-511の多型検査が, PG法と同様にH. pylori感染によって胃粘膜萎縮が進行しやすい症例を事前に予測でき, この検査をPG法に併用することにより胃がんのさらなる高危険群選定に有用な検査となる可能性が示唆された。しかしながら, IL-1BとCYP2C19の各遺伝子多型検査の併用についてはさらなる検討が必要と考えられた。

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© 2008 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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