日本消化器がん検診学会雑誌
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総説
シミュレーションモデルによるがん対策評価
祖父江 友孝
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2016 年 54 巻 3 号 p. 392-396

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抄録

2007年に策定されたがん対策推進基本計画では, 75歳未満のがん年齢調整死亡率を10年間で20%減少させることが全体目標の1つとして採用された。しかし, その設定根拠として, がん年齢調整死亡率が今後も年率1%で減少し続けると仮定するなどの曖昧な部分があった。それを解決する1つの方法として, がん対策の普及の程度とがん死亡率(あるいは罹患率)の動向とを分析的に連結するシミュレーションモデル開発の必要性が指摘されており, すでに, アメリカではCISNET(Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network)が, 国立がん研究所の支援のもとに, こうした課題に着手している。さらに, シミュレーションモデルによる検討は, 検診ガイドラインの策定の際にも, ランダム割り付け比較試験ではすべてのリサーチクエスチョンに回答できない状況において, 検診開始・中止年齢, 受診間隔に関する推奨を決定する際の基礎資料として活用されるようになっている。我が国においても, こうした取り組みを推進する必要がある。

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© 2016 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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