日本消化器がん検診学会雑誌
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症例報告
Helicobacter pylori未感染と考えられる幽門腺腺腫から発生した胃癌の1例
大澤 武浅田 康行木村 成里海崎 泰治
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2017 年 55 巻 1 号 p. 45-51

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抄録

症例は57歳, 女性。胃がんスクリーニング目的で受けた内視鏡検査で胃穹隆部に最大径4cmほどの褪色調の結節集簇様隆起性病変を認めた。病変の形態は主に丈の低い小顆粒状隆起が集簇し, 一部が粗大顆粒状であった。超音波内視鏡検査では病変部は第1層と第2層の肥厚した均一な低エコー領域として描出され, 第3層構造は維持されていた。生検でGroup 3(胃型腺腫)を検出した。内視鏡検査と胃X線検査で背景胃粘膜に萎縮はなかった。抗H. pylori抗体価は3.0U/mL未満で陰性であった。以上からH. pylori未感染と考えられる胃に発生した超高分化型癌(粘膜内癌)と診断し, 胃局所切除術を施行した。術後病理検査の結果, 腺窩上皮型の粘膜内癌で, 萎縮のない胃底腺領域に発生した幽門腺腺腫の一部から生じたものと推察された。病変は粘膜内に限局していた。H. pylori未感染と考えられる胃に幽門腺腺腫に由来する胃癌が生じることは稀である。

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© 2017 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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