日本消化器がん検診学会雑誌
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症例報告
膵脂肪腫の1例
阿部 寿徳相馬 渉武原 真一橋永 正彦脇坂 昌紀有田 毅
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2017 年 55 巻 6 号 p. 1084-1088

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抄録

膵脂肪腫は稀と言われている。また近年の画像診断の発達に伴い膵腫瘤を発見する機会が増加している。今回我々は, 定期健診の腹部超音波検査にて発見された膵脂肪腫の1例を経験したので報告する。症例は60歳代女性。定期健診の腹部超音波検査にて膵尾部に2.6cm×1.1cm大の比較的境界明瞭で内部均一な高エコー腫瘤を指摘。カラードプラでは腫瘤内部に血流は認めず, 主膵管の拡張も認めなかった。背景膵は頭部から尾部まで比較的境界明瞭に描出され肝臓と等エコーであった。追加精査のCT検査では, 膵尾部に境界明瞭で内部均一な低吸収域を認め, 腫瘤内部のCT値は脂肪濃度を呈していた。MRI検査では, T2WI画像にて膵尾部に境界明瞭な高信号を呈し, T2WI FatSAT画像で脂肪抑制を認めた。T1WI in phase画像では高信号を呈しopposed phase画像では腫瘤の輪郭が主に抑制された。以上より膵脂肪腫と診断し, 厳重に経過観察の方針とした。膵疾患の手術侵襲は大きなものであり, 複数の画像診断を駆使して本疾患を診断し, 不必要な外科的侵襲を回避できることは非常に有用であると考える。

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© 2017 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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