2024 年 62 巻 1 号 p. 3-8
【目的】Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後の血清抗体価を4つのキットで同時に測定し, それぞれの陽性率の経時的変化を検討して, 胃癌リスク者の選別に際しての既感染者拾い上げにおける有用性, H. pylori除菌成功者に対する不必要な除菌治療に繋がる危険性について明らかにする。
【対象と方法】2013年7月からの1年間で青森県の多施設共同研究に登録され, 除菌成功後6年間に3回以上血清を採取された239症例を対象とした。各血清について4キットで抗体価を測定し, 比較検討を行った。
【結果】除菌成功1年後から6年後の抗体陽性率は栄研Latex agglutination(LA)では58.9%, 45.1%, 45.0%, 35.5%, 38.7%, 40.4%, デンカLAでは63.9%, 52.4%, 39.6%, 36.2%, 35.1%, 27.7%, Wako LAでは75.7%, 61.6%, 55.0%, 53.9%, 48.8%, 40.4%であった。一方, Eプレートはカットオフ値 3.0 U/mLの場合, 72.8%, 62.2%, 48.6%, 45.4%, 38.7%, 34.0%であったが, 10.0 U/mLでは10.4%, 4.3%, 4.5%, 5.7%, 4.2%, 2.1%であった。
【結語】LA法はEnzyme immunoassay法と比較すると除菌後も血清抗体陽性が持続しやすい傾向にあった。LA法は胃がんリスク者の拾い上げには有用であるが, 除菌後例で血清抗体が測定される場合がしばしばあり, こうした際はLA法では特に, 他の検査や画像診断を組み合わせるべきと考えられた。