日本消化器がん検診学会雑誌
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総説
日本の大腸癌死亡率は, なぜ諸外国並みに減少しないのか?~私たちが今すぐ為すべきこと~
松田 一夫
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2024 年 62 巻 6 号 p. 818-826

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抄録

日本では1992年から免疫便潜血検査(FIT)2日法による逐年の大腸がん検診を開始し1996年から年齢調整死亡率が減少に転じたが, 主要7か国の他の国では日本以上に死亡率が減少している。

日本の大腸がん検診が効果を挙げない理由は, ①地域保健・健康増進事業報告による2021年の精検受診率(40~69歳)が69.9%と低く, ②職域でのがん検診に法的規定がないこともあり国民生活基礎調査による2022年の受診率が45.9%と低いからである。一方, 英国では2年に1回のFIT1日法による組織型検診が行われイングランドの2021/22年における受診率(60~74歳)は70%, 米国では10年に1回の大腸内視鏡検査が大半を占め2021年の受診率(50~75歳)は72.2%と高い。また北欧でのNordICC studyでは内視鏡群の受診率が42.0%と低く, 非内視鏡群の累積大腸癌死亡リスクとの間で有意差を認めていない。

日本の大腸癌死亡率を更に減少させるには大腸がん検診の周知と精検受診率向上が急務であり, 内視鏡検診を含めて誰もが受けられる体制づくりには職域におけるがん検診の法制化と組織型検診が必要である。

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© 2024 一般社団法人 日本消化器がん検診学会
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