日本消化器がん検診学会雑誌
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便潜血検査としての複数の出血マーカーの比較検討
松瀬 亮一内田 壱夫平田 一郎
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2006 年 44 巻 5 号 p. 465-473

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抄録

便潜血検査としての有用性を調べるために便中の血液成分を比較測定した。トランスフェリン (Tf) は, 大腸癌便中にヘモグロビン (Hb) の約5倍の血液相当量が存在しており, Hbより安定な出血マーカーと考えられた。α1-アシドグリコプロテイン (AG) は, 大腸癌便中にHbの約20倍の血液相当量が存在していただけでなく, 胃癌からも高率で検出されたため, 下部消化管だけでなく, 上部消化管の出血も検出できる出血マーカーであると考えられた。α1-アンチトリプシン (AT) は便中に高濃度含有されていたが, 出血マーカーとしての特異性が劣っていた。現在, 大腸がん検診でスクリーニング検査として利用されている便中Hb測定は, 抗原性が失われやすいために偽陰性が起きやすいだけでなく, 鋭敏すぎるカットオフ値の設定で偽陽性も生じやすいと考えられるが, これらの異なる出血マーカーの利用により, 問題が改善できる可能性が示唆された。

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© 社団法人 日本消化器がん検診学会
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