図学研究
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余市乗念寺鐘楼門の透視図による形態視実験
佐藤 仁一朗井野 智隼田 尚彦川田 孝之植松 武是
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1998 年 32 巻 Supplement 号 p. 15-20

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抄録
本論は、実測調査に基ずきCADを用いて復元した北海道余市郡余市町の文化財「乗念寺鐘楼門」を事例として行った形態視実験の結果についての報告である。被験者は東北工業大学電子工学科1年次学生104名、実験は2段階からなる。初めに、建物を中心に15度ずつ24等分した主視線上の軸測図24枚を作成し、原形態を最もよく表現していると思われるもの1つを選択させた。選ばれた軸測図のほとんどが進入方向である南北軸を中心として45度方向またはこれよりやや中心寄りのものであり、出入口や扉の全く見えない図の選択は皆無であった。人間が立体図から建物を想像しようとすると、その構造と機能がよく表現されている必要がある。前者は幅、高さ、奥行きの関係、後者は本例の場合、鐘楼門としての出入口や扉がこれに当たる。次に、各主視線ごとに視距離5.0m、7.5m、10.0m、12.5m、目標点の高さ2.0, 4.0, 6.0m (仰角: 下位、中位、上位) の異なる12枚の透視図を用意し、被験者が選択した主視線に応じて、視距離と仰角の好ましい組み合わせを選択させた。その結果、視距離に関係なく仰角中位のものが約70.0%を占め、視距離が建物の高さを上回る10.0m以上では仰角中位が約94.0%を占めた。視距離が大きくなると、建物全体として原形態を把握しようとする仰角が選ぶばれる傾向が見られる。これらのことは被験者が透視図を選択した理由の記述内容ともよく一致している。
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