図学研究
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投影図による立体の同定と手続き
梶山 喜一郎
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1999 年 33 巻 Supplement 号 p. 7-10

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抄録

投影図は立体を二次元平面に変換したものである。アフィン変換や射影変換を用いる投影図では、立体の持つ図形の性質は図的表現に保存されるものと失われるものがある。図形の性質が失われた投影図からは、立体図形の性質や計量的な大きさを知覚できない。幾何学の図形変換や座標系の知識を使用し、投影図のどれが保存された図形の性質であるかを判断する操作が必要である。これに対し、投影図に習熟していない段階の学習者は、図形の計量的な位置や大きさの推論に、座標に代わり投影図に記述した幾何図形の性質を直接用いる現象がある。立体図形の同定の実験課題を通して、なぜ座標に代わり幾何図形の性質を手続きに用いることが可能であるのかを考察した。この現象の被験者について以下のことを明らかにした。1立体の位相的な構造を判断するときには、投影図の座標系を使用する。2立体の大きさを推論するときに、投影図の座標系を利用しない。3.立体の大きさの判断に、図形の性質を利用する。4投影図に元の立体の図形の性質が保存されると誤解している。二つの異なる立体図に表現した四角錐を同定する際に、被験者は投影図の持つ図形の性質の情報を認知しない。このため投影前の図形の性質を復元するための座標系を使用する必要がなかったと言える。彼らは、計量的な図形の判断に幾つかの幾何学的知識を使用するが、これらの知識が数学的原理で統一されていない。問題解決で使用する幾何学の知識構造が数学的あるいは図法幾何学的なものとは異なっている。投影図の教育は、学習者がこの分野で使用する幾何学に関する知識構造をアセスメントし数学的なものにするように指導することが必要であろう。

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