図学研究
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透視図と絵画における省略遠近法
井野 智辻 美奈子佐藤 仁一朗宮腰 直幸
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キーワード: 透視図, 省略遠近法
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2001 年 35 巻 Supplement 号 p. 79-84

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抄録

CADを用いて作成した建築パースの多くは、外壁のタイル目地、サッシ、ガラス窓などの表現が全面均一に仕上げられているため遠近感やスケール感に乏しく、点景や遠景の描き込みが不十分なため見る人に無機質な感じをあたえる。CAD作品のもつこのような欠点を改善するには、視点からの距離に応じて描き込みを簡略化する、所謂、省略遠近法の導入が不可欠である。本研究では、建築を描く際に画家やパース専門家が省略遠近法や点景などをどのように描画しているかを作品分析で明らかにするとともに、細密すぎる描画が遠近感を損ないやすい鉛直材の透視図上の幅を計算で求め、複線表現や着色限界の指標値を検討する資料を得ることを目的としている。
前半の作品分析では、 (1) CADによる作品、 (2) 建築パース専門家による手描き作品、 (3) 画家または建築家による絵画各4例を相互に比較し、 (2) が建物自体の形態・色彩・テクスチャーや周辺環境をもっとも的確に表現していることを明らかにしたのち、複数のパース作品集より、 (1) 事務所建築、 (2) 商業建築、 (3) 公共建築、 (4) レジャー施設、 (5) 集合住宅各20例を抜粋し、建築細部の簡略表現や点景・遠景描画などの技法について定量的な分析を試みた。一方、鉛直材の簡略表現に関する定量的検討については、円形または正方形断面をもつ直材の透視図上の幅と、隣接材との隙間を求める計算式を導き、上記指標値を具体的に検討できる資料を提示した。

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